クルマ

F1の禁じ手ファンカーとその派生形クルマたち【シャコタン好きのレア車図鑑 vol.8】

2024-03-14

 

この記事はシャコタン好きかつマニアックカー好きの管理人が最近気になったクルマを紹介するページです。市販車からレーシングカーまで「コイツ只者じゃねぇぞ・・・」ってクルマをピックアップしていきます!

 

※この記事は2022年に公開したものに一部加筆を加えて修正したものです。

 

2022年からF1は大きく変わった。

昨年末オーバーテイク増加を見込んでF1車両規定を大幅に変更。約40年ぶりとなるグラウンドエフェクトカー復活ということで大きな話題となった。

大きなターニングポイントということで各社がどのようなパッケージを用意してくるのか、それによる勢力図に変化はあるのか、オフシーズンの話題のタネだった。

 

そしていざ2022年シーズン開幕してみると、開幕戦からフェラーリがご自慢のコーナリング性能を武器に絶好調。

開幕戦オーストラリアをシューマッハ&バリチェロ以来となるルクレール&サインツがワンツーフィニッシュで飾るなど、ここ数十年、低迷してきた赤い跳ね馬に復活の兆しが見えた。

かと思えば、2014年のハイブリットシステム導入以降絶対的な強さでタイトルを独占してきたメルセデスがまさかの大不振。革新的デザインと称されたゼロポットデザインがうまく機能せず、メルセデスでキャリア100勝以上を築いてきた史上最強ドライバールイス・ハミルトンはなんと2022年以降1勝もできず。

そんなメルセデスに見切りをつけたのか、2024年シーズン開幕前、2025年からのフェラーリ移籍を電撃発表。メルセデス黄金時代は完全に過ぎたるものになった。

代わりに台頭してきたのがレッドブル。ホンダ製パワーユニットと鬼才エイドリアン・ニューウェイ製が生み出す最強マシン、そして天才マックス・フェルスタッペンのドライビングのもと連戦連勝。22、23年とドライバーズ&コンストラクターズタイトルを連覇し王者の地位を不動のものとしている。

2023年は22戦21勝の大記録を打ち立てたレッドブル・ホンダ。この圧倒的な強さに黄金時代到来か。あと何年レッドブル帝国が続くのか・・・。

このようにグラウンドエフェクトカーの復活によりそれまでのF1勢力図は大幅に塗り替わった。レッドブル・フェルスタッペンを筆頭に新たな時代が始まっているのだ。

 

ところで、グランドエフェクトカーといえばひとつ面白い話がある。

グラウンドエフェクトカーの最盛期といえば1970~80年代。特にロータスが開発したロータス・78はグラウンドエフェクトカー最初の成功作といわれ他チームがそれに追随するカタチでグラウンドエフェクトカーの時代が到来した。

そんな中、名門ブラバムが開発したグラウンドエフェクトカーは他とは一線を画す画期的かつ「超危険」な恐るべきマシンを作り上げてしまったのである・・・。

F1史上最大の野心作?この『超攻撃的マシン』は、ほんの一瞬しかサーキットに現れなかったが、多くのF1ファンのハートを掴んだ。

 

 

 

 

史上最速のファンカー・ブラバムBT46B

シンプルながら最強のシステム

F1にグラウンドエフェクトカー革命を起こした名機ロータス・78。その後ジル・ヴィルヌーヴらの事故死を受けて禁止されるが、2022年に40年ぶりの復活。

1977年に登場したロータス・78はまさに「革命」だった。

飛行機に用いられる航空力学を応用して制作されたロータス・78は「グラウンドエフェクトカー」と呼ばれ1977年にはシリーズ2位、翌78年にはシリーズチャンピオンに輝いた。この発明はF1界における一大ムーブメントとなり、参戦チームはこぞって開発に乗り出した。

そんな中、名門ブラバムだけは少し異なるアプローチでグラウンドエフェクトカーを作ろうとしていた。ブラバムのマシンは三角断面モノコックシャシーと水平対向エンジンのせいで他社に比べ幅広になっていたため、グラウンドエフェクトカーにするには難しく、十分なダウンフォースが得られないとして頭を悩ませていた。

ブラバムが生み出したファンカーBT46B。見た目も強烈だが、走りもとんでもなく速かった。しかし程なくしてサーキットから姿を消してしまう。

 

そこでブラバムが考えたのが地面から空気を吸い上げることで強制的にダウンフォースを発生させ、車体後方のファンから空気を放出するという何ともダイナミックなアプローチだった。簡単に言ってしまえばF1カーに掃除機をくっつけたもの。

小学生でもわかる理屈だ。地面から空気をシューっと吸い込めば当然吸着する。そして吸った空気を排気ファンから放出する。なんともシンプルな理屈ではないか。

このマシンはブラバム・BT46Bと名付けられ、マシン後方リアウィング下部に搭載された大型ファンから「ファンカー」と呼ばれた。

ブラバム・BT46Bは1978年第8戦スウェーデンGPでデビュー。開発は極秘に進められ、停車時にはファンにゴミ箱のフタを被せて隠すなど、徹底した機密保持を行った。また予選ではガソリン満タン+ハードタイヤで走り「僕のとこのマシンはそんなに速くないですよ~」と言わんばかりに、周囲の注目を集めないように苦慮したという。

それでもいざレース開始になるととんでもない速さを披露し、王者ロータスを抜き去りデビュー戦を勝利で飾った。この勝利にブラバム陣営は沸き上がったが・・・、他のチームから大ブーイングが起こり、FOCA(現在のFIAにあたる)を巻き込んだ大騒動へとなってしまう。ブラバム・BT46Bは時代の長者となるところが、「負の遺産」として残ってしまうことに・・・。

デビュー戦スウェーデンGPでいきなり1位を獲得。しかしこれが最初で最後の参戦となり、以降サーキットに姿を現すことはなかった。

ところでなぜファンカーが強力かというと、その仕組みに最大の秘密がある。ファンカーは強制的にダウンフォースを発生しているため、どんな速度域でもどんな状態でも継続的にダウンフォースの恩恵を得ることが可能だ。

対してロータス・78のようなグラウンドエフェクトカーはある程度の速度がないとダウンフォースが発生しないため、高速域では有効だが中低速域ではメリットを得られないという弱点も抱えていた。

スピード不問のファンカーはシンプルすぎる理屈ながらその効果は大きく、レーシングカーの要であるダウンフォースを効率的に(強制的に?)得られるものとして優れたシステムだったというワケだ。

 

 

法律家招いてルールの盲点を突く

なぜブラバムBT46Bが秘密裏に人目を避けて制作されたのかというと、ルール違反になる恐れがあったためだ。

F1の車両規定には「第一機能として空力部品は稼働してはならない」というルールがある。現在でもエアロパーツの変形性や違法稼働の指摘があるように、そのパーツが稼働することへの優位性が密かに知られつつも、古くから禁止ルールとして明確に記されてきた。

ところが開発者のゴードン・マレーはこの「第一機能」という言葉に目を付け、副次的な効果だったら空力部品が稼働してもいいはずだ、という結論に達した。そのためブラバム・BT46Bに取り付けられたファンは「ラジエーターを冷やすために設置したもの」だとし、ダウンフォースの発生は「’’オマケ’’で偶然発生した」と説明しルール違反ではないとしていた。

ただのヘリクツに聞こえるが、この結論にいたるまでわざわざ法律家を読んでルールブックの盲点ともいえる解釈を行ったらしい。まぁ実際ラジエーターには空気を当ててはいたので、第一機能ともいえなくはないが・・・。それにしても勝つためにこんなことまでするなんて、F1とはつくづく恐るべき世界だと知らされる。

 

 

ファンカーの危険性と撤廃へ

デビューと同時に華々しく勝利を飾ったブラバム・BT46Bだったが、それを他チームと関係者は黙って見ていなかった。前述したようにかなりルールスレスレ(というか実質アウト)だったので非難が殺到したうえ、敵チームドライバーからはその危険性についての発言が相次いだ。

そもそも地面の空気を強引に吸い込みファンから放出するという構造上、空気と一緒に地面の小石やタイヤカスを吸い込みファンから放出してしまう。そのためレース中スリップストリームを狙って後方に着くドライバーたちは、目の前からBT46Bが吐き出した小石やタイヤカスが飛んでくるという危険性があった。さらにドライバーだけでなく観客席にも飛散する恐れがあるとして、ただちに議論の的となった。

結果的にこれは大騒動となり、F1を統括するFOCAを巻き込んでのロビー活動へと発展。スウェーデンGPでのリザルトは取り消されなかったものの、次戦以降の使用禁止とファンカーの永久撤廃が約束され、安全性に大きな問題があるとして、夢のファンカーBT46Bはわずか一戦で姿を消した。1戦1勝(勝率100%)という成績だけを残してファンカーはサーキットから消え去った。

わずか1戦で姿を消し無敗伝説として語り継がれるブラバム・BT46B。嵐のように過ぎ去った強烈すぎる個性は我々に何を残したのだろうか。

長年F1を実質的に支配していたバーニー・エクレストンは、後年「BT46Bはテクノロジーの分野ではなく、F1の政治的な部分に大きな影響を与えた」と語っている。他チーム陣営がエクレストンを一方的に攻め立てたことにより、F1シリーズを存続させるためには撤廃させるしかなかったとしている。

エクレストンは「F1には民主主義ではなく、独裁者が必要」と述べているが、もしかしたらこの一件があったからこそ、そう思うようになったのかもしれない。強い支配者がいなけければルールがあやふやになってしまう。以降数十年にわたりエクレストンの絶対王政が形成されるわけだが、そのバックストーリーにBT46Bの影があったことは想像に難くない。

 

 

勝率100%の伝説

無敗神話のブラバム・BT46B

かくしてたった1戦して消え去ってしまったブラバム・BT46B。F1では日夜新たなテクノロジーが生み出されているが、ファンカーほど強烈なインパクトを残したのもそういないだろう。一度も負けることのないまま、勝率100%の最強マシンとして今日まで語り継がれることとなった。

撤廃に当たってはすったもんだがあったが、もしあのままスウェーデンGP以降も参戦を続けていたらどんな成績を残していただろう?あるいはファンカーが新たなレーシングカーとしてのスタンダードになった未来もあったかもしれない。今となっては完全に夢幻であるが、どうしても勝率100%の不敗神話には心躍らずにはいられない。

 

 

ゴードン・マレーが夢見るファンカーの復活

我々モータースポーツファンにとっては古き良き時代の思い出話に過ぎないが、今なおファンカーの研究に心血を注ぐ者がいる。なんとBT46Bの開発者であるゴードン・マレーだ。

マレーは2017年自身の自動車会社ゴードン・マレー・オートモーティブを設立。2020年にファンシステムを搭載したT.50というハイパーカーを発表した。彼はいつかファンカーの要素を取り入れたロードゴーイングカーを開発したいと考えており、それが40年越しに実現したカタチだ。

直径400mmのファンを搭載したT.50。ゴードン・マレーが夢見たファンカーのロードゴーイングモデル。1000kg未満のボディに700馬力のエンジン・・・。一体どれだけ速いのだろう?

なおマレーは過去にマクラーレンF1のデザインも手がけており、こちらにも部分的にファンカーの要素が取り入れられていたという。マレーは40年以上にわたりファンカーの可能性を追求し続けており、それがレーシングカーにおける有用なデバイスであると確信しているのだ。

もしかするとサーキットにファンカーがよみがえってくるのはそう遠くない未来なのかもしれない。そのときは我々はまた、オキテ破りな超スピードを目にすることになるだろう。

 

 

世界のファンカーたち

ファンカーといえばブラバム・BT46Bが最も有名だが、それ以外にも部分的・構造的にファンカーを採用した例がいくつか存在する。ここでは世界中で生み出されたファンカー機構を採用したとされるクルマたちを紹介しよう。

 

 

 

シャパラル 2J

「白い怪鳥」の異名をとるシャパラル・2J。マシン後部に2基のファンを搭載した世界初のファンカーと言われている。

シャパラルはアメリカのレーシングチーム。1970年にCan-Amシリーズに参戦した際に世界初となるファンカー、シャパラル・2Jを投入した。シャパラルはレース界のイノベーターであり、今日当たり前となっているGTウィングを最初に採用したのもこのチームだといわれている。

そんなシャパラルが生み出したの最大の野心作がシャパラル・2Jである。ハリボテボディにファンを2個搭載した「クルマ」というより「エアコンの室外機」のような見た目だがその性能は、当時の絶対王者マクラーレンを上回るほど抜群のモノだったらしい。

この数年後にブラバム・BT46Bが製作されるわけだが、ゴードン・マレーがシャパラル・2Jからファンカーの着想を得たのかは不明。いずれにせよその衝撃的なルックスと性能はモータースポーツ界にその名を刻むのに十分だったということだ。

 

 

フェラーリ・599XX

フェラーリXXプログラムの一環で開発されたサーキット専用車両。フェラーリが持つ技術の限界をつぎ込んで開発される公道不可・レース不可のサーキット走行専用シリーズであり、フェラーリ・599XXはその名の通りフェラーリ・599GTBをベースに開発。

見た目こそ599GTBにいくつかのエアロパーツを追加しただけのものに見えるが、車体底面に2基のファンが装着されており吸入した空気をテールライト付近のグリルヵら放出する。安定的なダウンフォースを得られる装備としてアクティフロー(ACTIFLOW)と呼ばれているが、まぁ紛れもないファンカー由来である。

フェラーリXXプログラムは現在FXX Kへと受け継がれているが、こちらにはアクティフローは継承されなかった。

 

 

マクラーレン F1

名門F1チームが本気で作ったロードゴーイングカー、マクラーレン・F1。優れたマシン性能と革新的メカニズムからマクラーレンの象徴的存在として知られる。

マクラーレンの市販車部門であるマクラーレン・オートモーティブが販売した市販車第一号。マクラーレン・F1は名門レーシングチームらしく徹底的にレーシーに製作され、特に目を引くのは左右重量バランス最適化のための3人乗りセンターシートだろう。

全日本GT選手権(現SUPER GT)のGT500クラスでは参戦一年目から無類の強さを発揮しタイトルを奪取。赤黒のマルボロカラーから「黒船」と称され、強すぎてルール改正が行われた挙句、半ば強制的に追い出されてしまうほどだった。

そんなマクラーレンの名車にも部分的ではあるがファンカーのメカニズムが応用されており車体底面に吸入ファンが装着されている。デザインしたのはもちろんファンカー生みの親ゴードン・マレー。

 

 

レッドブル X2010(X2014・X2019)

レーシングカーの『究極』を体現したレッドブル・X2010シリーズ。グランツーリスモ内だけではあるが、その速さは他の如何なるクルマとも比べ物にならない。

「レギュレーションにとらわえなければどれだけ優れたレーシングカーを作れるのか?」そんな夢のプロジェクトを立ち上げたのがグランツーリスモとレッドブル・レーシングだ。

F1やツーリングカーなどモータースポーツには必ずルールが付きものだ。公平性や競技性の為ルールが事細かに制定されているが、同時に自由なレーシングカーの製作を阻んでいる。そんな障壁が一切なければ人はどこまで優れたレーシングカーを生み出すことができるのかにチャレンジしたのがレッドブル・X2010だ。

その性能は3.0リッターV6エンジンから1500馬力を発生させ、空気抵抗となるタイヤやシャシーはすべてカウルで覆われている。さらにマシン後方にはファンシステムが搭載され、ダウンフォースの徹底的な追求が行われている。

ゲーム内だけでのオリジナル車両とはいえ、まさに夢が広がるデザインだ。いつかリアルの世界でもお目にかかりたいものだ。

その後2014年にアップデートされたX2014、そのX2014を競技用にモディファイされたX2019 Competitionが発表された。

 

 

マクマートリー・スピアリング

実寸大チョロQ?寸詰まりでなんだかみょうちくりんな見た目だがそのスペックはスーパーカーに匹敵する。

イギリスの新興メーカー、マクマートリー・オートモーティブにより開発された小型電気自動車であるスピアリング。軽量・小型・ハイパワーの怪物マシンである。同じく英国のアストンマーチン・ヴァルカンのチョロQ版のような見た目だが、性能はとてもじゃないがイカれている。

1人乗り専用でパワーウェイトレシオは1000馬力以上と言われており、さらに走行時のダウンフォースはF1マシンに匹敵するという。その理由は電動ファンにより強制的にダウンフォースを発生させているから。ファンカーの原点であるBT46Bと全く同じパッケージなのだ。

その強烈すぎるスペックのため電動ファン使用はサーキット限定。なお開発にはマックス・フェルスタッペンが関わっており2022年プロトタイプで行われたグッドウッドでのタイムアタックにおいてフェルスタッペンドライブのもとレコードを樹立している。

 

 

余談だが今回調査にあたって発見したことがある。どういうわけかわからないが、

70年代 シャパラル・2J
70年代末期 ブラバム・BT46B
90年代 マクラーレン・F1
10年代 レッドブル・X2010
20年代 マクマートリー・スピアリング

とコンスタントに10年毎にファンカーが世に出現しているらしい。70年代に禁じられたハズなのに最速を求める走り屋野郎たちの脳裏にはいつもファンカーがあるらしい。速さへの渇望は人類の永遠のテーマかもしれない・・・。

 

 

 

 

 

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