ハイ。終わりました。2023年のF1が終わりました。
11/26の最終戦アブダビGPをもって2023シーズンの全日程を終了いたしました。
今年は史上最多となる全23戦が行われ、豪雨で中止となった第6戦エミリア・ロマーニャGPを除き22戦が行われました。
今年は私が初めて日本GPを観戦したこともあって非常に特別なシーズンとなりました。これまではハイライトやニュースを見て満足してしまっていましたが、いざ当事者になると話は別で、DAZNでフリー走行~決勝まで可能な限りリアルタイムで全セッションフルタイムで見てました。とにかくF1のことが頭から片時も離れなかった、そんな1年でした。
そんなわけでサクサクっと今年のF1を振り返ってみたいと思います。
文句なしに史上最強だったレッドブル・フェルスタッペン
昨年2022年から導入されたグランドエフェクトカーレギュレーション。これにいち早く対応し結局今年もトップランナーで走り続けたのがレッドブル、そしてフェルスタッペンでした。
これで2021・2022に続いて3度目のワールドチャンピオンとなったフェルスタペンですが、今年の彼の走り、そしてそれを支えたレッドブルリームは『史上最強』と称するのにふさわしいものでした。
最強F1マシンRB19
無冠の帝王マンセルを初の年間王者に導いたウィリアムズ・FW14B、シューマッハの黄金期を支えたフェラーリ・F2002、メルセデス帝国を築き上げたW11・・・F1の歴史にはときどき最強マシンと呼ばれるものが現れることがある。今年のレッドブルのマシンはそれらに匹敵、あるいは凌駕するスーパーマシンであったことに疑いの寄りはないでしょう。
22戦中21勝。これが今年のレッドブルの成績です。シンガポールを除くすべてのレースでレッドブルが勝利。1シーズンの勝利記録、勝率記録などあらゆるレコードを更新し歴史にその名を刻みました。
1988年のマクラーレン・ホンダが達成した16戦15勝を越える大記録。文字通りレッドブルが『支配』したシーズンでした。
昨年から導入されたグランドエフェクトカー規定にいち早く適応し、成熟させられたことが成功につながったと考えられます。シーズン終盤には全チームが通称”レッドブル型”と称されるダウンウォッシュ型ボディを採用したことからも分かるように、現レギュレーションに最も適したパッケージを最速で発見、研究を進められたことが大きな要因だと思います。
また非常にタイヤに優しいマシンであったことも大きな勝因でした。というのも、モータースポーツではポールポジションが基本的に優位なわけですが、今年のレッドブルのPP率は63%しかなく、意外にもポールスタートは少なかったことがわかります。(参考までに1988年は93%でした・・・)
昨年もマシンの信頼性が安定した中盤以降はこの傾向にあったのですが、要するに
「予選はダメでも決勝で早ければいい」
=「先頭でなくても速ければ追い越せる」
=「速い速度で走れる時間が長い」
というのを着実に遂行したからであり、ドライバーの技量ももちろんですが、根本的にタイヤに優しいマシンでないとこのようなパフォーマンスは出せません。
対照的なのがフェラーリで、フェラーリは予選は速くてもレースになるとタイヤが厳しくなって速く走れないというシーンを何度も見ました。追い越しにくいサーキットならそれでいいかもしれませんが、今はDRSもありますし、何よりグランドエフェクトカー規定にしたきっかけがオーバーテイク増加を見込んでのことだったと言われているので、抜かせない&追い越すために速い速度の維持は必要不可欠だったというわけです。
今となっては「そんなの当たり前」ですが、レギュレーションに沿って最適解を見つけたレッドブルに軍配があがったということですね。いやはやエイドリアン・ニューウェイおそるべし・・・。
そして忘れてはならないのがホンダ製パワーユニット。RBPTホンダとして搭載された今年のエンジンもますます快調で、パワーと信頼性を兼ね備えた最強エンジンでした。
パワーはあっても壊れちゃダメ、頑丈なのはもちろん速くなくちゃダメ。エンジンには「速い×頑丈」という二律背反を求められるワケですが、これを高いレベルでやってのけるホンダエンジンは本当にスゴいと思います。
2026年の新規定導入に合わせて契約解消、新たにアストンマーチンとの提携になるとの発表もありました。既に袂を分かつことが決定しているレッドブルとホンダですが、いったいこの先はどうなるのでしょうか・・・。
凄みを増したフェルスタッペンというドライバー
今年のF1はこの人物を中心にずーっと回っていたと言っても良いでしょう。マックス・フェルスタッペン。26歳にして3度のワールドチャンピオン。この年にしてもはやドライビングスキルは完成されたといってもいいかもしれませんね。
レッドブルのマシンが強力だったのはもちろんですが、当然それを操縦するパイロットがマシンの生殺与奪を決めるわけで、ポテンシャルを活かすも殺すもドライバー次第。
史上最年少17歳でF1ドライバーになったフェルスタッペンは今年で9シーズン目を迎えました。年齢は若いですがデビューも早かったので実はF1キャリアも長いのです。
レッドブル21勝のうち19勝を獲得したフェルスタッペン。あいだ10連勝を記録するなどF1の歴史に燦然と輝くレコードを数々築き上げました。
そんなフェルスタッペンですが、今年の走りはまさに王者の走り。落ち着いていて淡々とやることやって勝っていく様は昔のシューマッハやハミルトンを見ているみたいで、「王者とはこういうものか・・・」というのを痛感しました。
初のワールドチャンピオンに輝いた2021年は、もちろん才能あふれるテクニックとスキルもあったのですが、時々幼さというか未熟さを見せる場面もありました(ジェッダの一件とかね)。が、今年に関しては一切なく、堂々と「なんか文句でもあるか?」と言いたげな走り方、立ち振る舞いだったと思います。
特にコーナーで横並びになったときなどは全く譲そぶりも見せませんし、他車を追い抜く時も「そこで行くの?」みたいなとこでズカズカ入っていくし、「俺が通るんだからどけよ」と言いたげなドライビングが目立ちました。なんか悪く書いてる感じになってますが、レーサーにとって他車を抜かせないことは当然大事なわけで、フェルスタッペンのやってることは至極まっとうです。
勝負の世界なので、お行儀の良さよりも勝利への貪欲さが求められるワケで、セナ、シューマッハ、ハミルトンらがそうであったように彼も勝者たるスタンス、その領域に入りつつあるのかなと思います。
具体的なところでいうと、ペースを調整して走るのが並外れて上手かったと思います。今年のレッドブルの必勝パターンとしてレース開始10週程度でレースリーダーになり後続との差を突き放す。その後後続車のペースを見ながら自らもペースを調整し追いつかれない程度のリードを保ち続けるというシーンが何度もありました。
それだけ単純な速さだけでなくタイヤマネジメントに秀でていたことがこれほどの勝利を積み上げられた要因ではないでしょうか。マシンのポテンシャルを最大限引き出しつつマネジメントする。チームとの連携を含めてファンタスティックでした。
苦難のシーズンを戦い続けたペレス
シーズンを通して絶好調だったフェルスタッペンとは対照的に苦しんだのチームメイトのセルジオ・ペレス。”チェコ”の愛称で親しまれる陽気なメキシカンですが、今年の彼の表情はとても暗かった。こちらも見ていてつらくなるものでした。
第2戦サウジアラビア、第4戦アゼルバイジャンで優勝したのを最後にその後は苦戦が続きました。ぺレス本人も口にしているように第5戦スペインで導入されたアップデートに苦戦していたようです。
ドライバーのマシンの好みというのは千差万別でF1マシンともなればセッティングは細部に渡ります。またチームのファーストドライバー向けに優先するのが常套手段であり、当たり前といえば当たり前なのですが、それがぺレスを苦しめる原因になってしまいました。
今期最強パッケージとされる同じレッドブルマシンなのに1人は連戦連勝で1人は予選Q3に残れないほど苦戦続きだとどうしても「え・・・?」っていう目で見られてしまいます。
裏を返すとフェルスタペンはマシンの性能だけでなくレーシングスキルも合わせ持っていたということが分かります。マシン性能+ドライビングスキルがあったからこそ山ほど勝てたワケで。
ファーストドライバー・セカンドドライバーはない、というのが一応F1上の認識?となっているのですが、実態としてチームオーダーがまかり通っているのが現状です。1チーム2台で戦うF1だからこそいつの時代も取りだたされる話題ですが、やはり来年もこうなってしまうのか・・・。
2023年F1で印象に残ったシーン
レッドブルの強さが光りまくったシーズンでありながら、見どころはそれだけではありませんでした。移籍初年度から大活躍のアロンソ、後半から急激に強くなったマクラーレン、そして成長著しい我らが角田裕毅・・・。
印象深い場面から名バトルまで今年あったいろんなシーンをピックアップしてみたいと思います。
第7戦 モナコGP
伝統と格式を誇るモナコGPはいつの時代もF1の中心になってきました。今年は世界的にコロナ明けということもあって例年の活気が戻って来ていたような気がしました。
そんなモナコ・モンテカルロですが、狭いストリートサーキットで繰り広げられる予選は毎年激戦になることでおなじみです。特にモナコは激狭テクニカルサーキットなのでF1カレンダーの中でも随一のドライバーズサーキット、つまりドライバーの本当の手腕が試されるコースと言われています。
そんなモナコで光輝いたのが今年バツグンの活躍を魅せたフェルナンド・アロンソでした。開幕3戦連続で表彰台をゲットしてきた大ベテランの凄まじいドライビングが光りました。
第7戦モナコを迎えた時点でレッドブルが全戦全勝。今年もやっぱりレッドブルか~となっていたところを予選で済んでのところまで追いつめる激走を見せます。、最終的にはフェルスタッペンのトップタイムに0.084及びませんでしたが、間違いなく予選の主役はアロンソだったと思います。
レースでも無事2位を確保し、今期のベストリザルトを獲得しました。近年のアストンマーチン、さらにアロンソというドライバーを考えてもこの躍進ぶりは開幕前は誰も想像していなかっただけに、大ベテランの復活に誰もが歓喜しました。
第21戦 ブラジルGP
アイルトン・セナの魂が眠るブラジルはいつも熱狂的なブラジリアンに支えられ盛り上がって来ました。長い歴史と共に数々の名シーンを産んできたインテルラゴスですが、今年もまたそ歴史の1ページに刻まれるような名バトルが展開されました。
レースは終盤、3位を走るアロンソはすぐ後ろまで迫ってきたペレスにラスト10周あたりからプレッシャーをかけられ始めます。今期最強スペックを誇るレッドブルマシンというだけあってかなり苦しい展開を強いられます。タイヤ的にもペース的にもペレスがアロンソを上回っていたと思います。
71周中70周目ついにアロンソがペレスに抜かれてしまいます。71周目、1コーナーでのペレスのミスを見逃さなかったアロンソはその先のストレートで再び抜き返しました。ホームストレートでは2台ピッタリ並んだ状態でチェッカーへ飛び込みました。その差0.053秒差でアロンソが3位!ハナ差の大激闘に大いに沸きました。
特筆すべきはペレスとの攻防になってからのアロンソの走りです。最も速く走れるレコードラインではなく追い抜きさせないための加速重視の独自のライン取り、ダーティエアー(乱気流)をぺレスのマシンにわざと当てるなど、ベテランの技ここに極まれり、というテクニックで見る者を驚愕させました(しかもそれをインタビューで自分で説明してました笑)
私みたいな素人は「レースなんて速く走ればいいんでしょ?」「反射神経・運動神経がモノを言うんでしょ?」なんて思ってしまいがちなんですが、違うんですね。それだけでなくもっと奥深いたくさんのテクニックがあって成り立っているんだなと実感しました。
レース後インタビューではペレスと笑顔で抱擁するシーンもありました。今年後半スランプに陥っていたペレスですが、このレースでは表彰台を逃したとはいえ満足な走りができたようで表情も明るかったので安心しました。
2023年のブラジルGPは今後も語り継がれていくべき名レースだったと思います。
第22戦 ラスベガスGP
初開催ということで今年最も注目されたのは間違いなくラスベガスGPでしょう。ラスベガスでレース?しかもF1??誰もが予期しなかったし、どうなっちゃうんだろう?とワクワクしたはずです。
ところが初日からいきなり事件発生!なんとFP1からマンホール(正確にはマンホールの縁の部品)が外れるアクシデント。ストリートに作られたラスベガスサーキットは普段一般道であるためコースのいたるところにマンホールがあります。それがスリックタイヤにくっついたかダウンフォースで引っ張られて外れてしまったんですね。
この事件でフェラーリ・サインツの車両は大きなダメージを負い修理したことでペナルティを受けました。完全に主催者側のミスですが、補填するルールがないからペナルティにするしかないとのこと。どう考えてもヒドすぎるジャッジにフェラーリから猛抗議が起きました。
ところが結局何の謝罪も便宜もなくシーズン終了・・・。それどころかフェラーリのバスール代表とメルセデスのトト・ウルフ代表はラスベガスGPに文句を言いすぎたとして厳重注意されてしまいました。
民主主義の世界でこんな無茶苦茶がなぜまかり通るのか?それはこのレースの主催者がF1のオーナー・リバティメディアだからです。そもそもこのラスベガスGPはオーナー自らが初めて主宰するということで「絶対成功させる」ビックイベントだったのです。
開催にあたりラスベガスの土地をF1専用に購入していることからも分かるように、今年のカレンダーの中でも開催費用が桁外れです。総費用は5億ドル(約750億円!)と算出されています。いやいやどうなってるの?って話で。そらチケットもバカ高くなるわな。
会場にはたくさんのセレブが溢れ、見た目には豪華で凄まじいイベントでしたが、なんだかんだ問題だらけのグランプリでした。
・マンホールが外れたこと
・主催者ミスなのにサインツに補填がなかったこと
・FP1のトラブルでFP2終了が朝4時半になったこと
・FP2遅延に伴い観客が強制退場になったこと
・チケット代が高すぎること・・・
・翌週に時差の大きいアブダビが控えていることetc...
マンホールぶっ飛び自体はバクーでも何年か前にあったことですが、後処理含め、今後改善すべき点が多いグランプリになりました。フェラーリが好調だっただけにサインツのペナがなかったらリザルトも変わっていたかもしれません。
F1がバーニーエクレストンのもとを離れアメリカ企業の手に渡り、ヨーロッパを中心に回っていたF1がだんだんアメリカ・オイルマネー豊富な中東あたりに流れていくのかな・・・なんて思わせる、そんなグランプリでした。
レース内容というより、F1の問題点、それから今後の展望(野望?)が少しだけ見えてきたような、そんなグランプリだったと思います。
第23戦 アブダビGP
もはや恒例となりつつある最終戦アブダビ。アブダビといえば2021年のファイナルラップでのフェルスタッペンの大逆転チャンピオンそしてホンダ30年ぶりタイトルですが、今年のアブダビも我々日本人にとって忘れられないレースになりました。
今年10チーム中最弱と言われてきたアルファタウリのマシンで数々の激走を披露してきた角田裕毅。2021年にも自己最高4位を獲得したコースなので相性はもともとよかったのですが、今年の走りもキレていました。
それもそのはず。今年は自身をF1の世界に導いた恩師、フランツ・トスト代表が引退するということで並々ならぬ決意でレースに臨んでいたそうです。トストはラルフ・シューマッハが全日本F3参戦時にマネージャーをしていた人物で、そこでホンダとのコネクションができたといわれています。
それから20年以上の時が経ち、2016年自ら代表を務めていたトロロッソでホンダエンジンを採用、その後レッドブルにも供給されるきっかけとなりました。すなわち今日のレッドブル・ホンダの天下無双はトストなくしてありえなかったワケで、ホンダドライバーである角田くんがF1ドライバーになれたのもトストによる影響が大きいです。
そんな角田くんですが、なんと予選で自己最高の6番手ゲット。表彰台も狙える位置だけに俄然期待が高まります。しかし他チームが2ストップ戦略を取る中、思い切って1ストップ戦略を敢行。しかしペースに苦しみ結局8位フィニッシュとなりました。恩師への捧げる有終の美のために勝負に出ましたが結果は8位。
それでも戦闘力の低いマシンで上位勢と渡り合う激走ぶりに角田くんは自身初となるドライバーズオブザデイを獲得しました。本人も「勝負に出なかったらもっと低い順位だったと思う」と述べた通り、最終戦にふさわしいナイスファイトでした。
また1ピット作戦を取っていたため一時レースリーダーになるなど、見どころも大変多いレースになりました。肝心のトストは「1ピットはありえねぇだろ!」とアルファタウリクルーに憤慨していたようです・・・。もう引退なのに暑すぎる!
アメリカGPでのファステストラップ獲得も含め、3年目を迎えた角田くんの走りを見ていると日本人初優勝も夢じゃない・・・?とも思いました。それくらい彼のスキルは卓越しており、あとはマシンさえ揃えば・・・というところだと思います。
さらにレース終盤ではコンストラクタータイトルを巡り頭脳戦が展開。ルクレールが5秒ペナルティが決定しているペレスをあえて抜かせ、先行するペレスの5秒以内に入りつつ引っ張ってもらつことで、メルセデスのポイント獲得を阻止しようとする頭脳プレーを行っていました。結局うまくいかずメルセデス2位、フェラーリ3位になりましたが、F1ドライバーって全速力で走りながらそんなことできるの!?と驚きました。シミュレーションゲームかよ!
来年の日本GPは4月開催!絶対行きます
というわけで今年のF1を振り返ってみましたが、結局ほとんどレッドブル・フェルスタッペンが勝ってしまったので王者は誰になるんだろう!?みたいなドキドキはなく「あぁ~今年はレッドブル無双か~」と前半戦で既に見切りをつけたところはありました。
今年の主役はもちろん王者フェルスタッペンなことには間違いないのですが、アロンソの活躍がとにかく目立ちましたよね。やっぱりベテランが頑張ってくれるとすごく盛り上がりますねー。レッドブルというチームで見てもフェルスタッペンとペレスの対照的な姿を見て、チェコには悪いですが、そのへんもF1の奥深さを感じられて面白いと感じました。
むしろ後半になってからのマクラーレン、メルセデス、フェラーリ、アストンマーチンのバトルが面白く、2位以下は大混戦になっていたのでむしろそっちのほうが面白かったです。来年は2021年のようなデッドヒートが見たいデス。
さて秋開催の日本GPは一旦区切りがつきまして、来年からは春開催になります。いつもだったらシーズン終了から1年近く待たないといけないんですが、あと半年足らずでやってくると思うとワクワクせずにはいられません!!!
来年も行きますよ~。