この記事はシャコタン好きかつマニアックカー好きの管理人が最近気になったクルマを紹介するページです。市販車からレーシングカーまで「コイツ只者じゃねぇぞ・・・」ってクルマをピックアップしていきます!
今年10月28日から一般公開されるジャパンモビリティショー2023(旧:東京モーターショー)。コロナ第五類移行後初めてとあって国内外から多くの来場が予想される。クルマ好き、いや日本人にとってもはや秋の風物詩的な存在になりつつあるイベントだ。
毎年各メーカーから発表される新型車やコンセプトカーはとても興味を引くものだし、会場内でのイベントも盛りだくさんで毎年行きたいなと思っているイベントのひとつだ。私は2019年に行ったことがあって、そのときは屋外会場でドリフトの演技走行が行われていた。今でもスバル・WRXのラリー仕様のミスファイアリング音は耳に焼き付いている・・・。
それとGRヤリスWRC仕様もスゴかった・・・まだ日本でGRヤリスが市販化される前だったけどとんでもないオーバーフェンダーに驚いた。市販化されたらどうなるんだろう?と思ったら案の定市販モデルもイカついフェンダー幅でニンマリしたもの。
そんなこんなで今年も楽しみで仕方ないジャパンモビリティショーですが、出展車両でひときわ目立つ一台を発見。「TOYOTA kayoibako(トヨタ・カヨイバコ)」トヨタが開発中の超拡張型自動車だそうで、要するに何でもできる自動車を目指しているだとか。
何でもできるユーティリティ自動車といえば、やはりトヨタならハイエースが一番に頭に浮かぶのだが、それの進化版・未来版といったところだろうか。なるほどそれでこのカタチなのね!・・・と言いたいところだが、あまりに奇怪。一見するとアルファード?にも見えなくもないけど、なんか窓もちっさいし、妙にハリボテっぽいし・・・。どうみてもユーティリティーには見えませんが??
そんなカヨイバコを見てたら、とあるクルマを思い出したんです。今でも世界最速と呼ばれている伝説のミニバン・・・「ルノー・エスパスF1」日産の親会社、フランス自動車の超大手、カルロス・ゴーン率いるルノーが何を思ったか作り上げてしまった変態マシンである。
自動車史に燦然と輝くイカれマシン、ルノー・エスパスF1を振り返ろう。
ルノー・エスパスF1の誕生
ルノー&マトラ協業10周年
ルノーは古くからモータースポーツに積極的な企業として知られている。ラリー、耐久レース、様々なレースカテゴリーで活躍してきたルノーだが、我々日本人にとってひときわ印象に残っているのがF1への参戦だろう。
ナイジェル・マンセルを擁して戦った1992年は新開発のFW14Bが破竹の勢いで連戦連勝。それまで黄金時代と称されたホンダF1の全盛期に完全にクサビを打ち込んだ。以降93、95~97年とチャンピオンを獲得。F1はルノーエンジンなくしては勝てぬ時代となっていた。
そのルノーとタッグを組んでいたのがマトラ。マトラはもともと航空宇宙工学を専門とするメーカーだが、コンストラクターとして初期のF1にも参戦。1969年には年間王者にも輝いている。ワークスとの参戦は72年をもって終了したが、その後も他チームを介して技術提携。ルノーとは1984年から提携してる。
そこでちょうど協業10周年となる1994年に「何か気の利いたことをやろうぜ」となって開発されることになるエスパスF1。前年にプロストを擁したウィリアムズ・ルノーがチャンピオンを獲得したことで勢いに乗っていたということもあってか、思い切った作戦を思いついてしまったんだろう・・・
ミニバン×F1エンジン
私が想像するにエスパスF1の開発経緯はこうだ。
「せっかくF1王者なったんだし、市販車にF1のエンジン載っけたいよね~」
「わかる~やべーモンスターマシン作りたいじゃん?」
「でもウチのクルマにF1のエンジン載っけられるヤツある?」
「あ~ないね~、でも別にボンネットの中じゃなくてもいいんじゃね?」
「あ、そっか、WRCのサンクターボのときのヤツでいいのか。」
「そしたらちょうど後部座席にF1エンジンが入りそうな手頃なミニバンがあってだな・・・」
こうした経緯があって(?)開発され始めたエスパスF1。
ベースにはルノーで販売されているミニバン、エスパスを使用。ちなみにエスパスは今では当たり前となったミニバンの先駆けであり、エスティマやオデッセイのご先祖様といったところか。現在はSUVにスタイルチェンジしたものの、とにかくスポーツ走行とは縁もゆかりもない車であるということだ。
そこに目玉となるのがエンジン。あろうことか1992年にウィリアムズ・ルノーの傑作マシンFW14Bで使用されていたV10エンジンを搭載してしまったのだ。ちなみにレプリカでもなんでもなくガチのガチ。本物のヤツを使ってしまったというのだからヤバすぎる・・・。
当然そんなドデカいエンジンがボンネットの下に収まるはずもないので、後部座席の足元の位置にドカンとレイアウト。おそらく世界一窮屈な後部座席のミニバンになっていたと思う。(一応後部座席もバケットシートで設けられていた)
ミッションや足回りもそのままFW14Bより移植。エンジンの上にサスペンションの一部がレイアウトされるプッシュロット式。これぞF1カーというような心躍るメカニズムだ。
外装だって抜かりない。V10エンジンのパワーを受け止めスポーティに走行するためにエアロパーツも大幅強化。まずワイドトレット化を敢行しフロントからリアフェンダーまで極太仕様だが、まるで既製品かのような美しい一体感もある。
フロントドアには明らかに乗用車にはおかしい巨大ダクトフィンが追加。おそらく後部座席に鎮座したF1エンジンへと空気を流入するために作られたものだろう。
公式の発表によれば、最高時速は194マイル(310km!)推定出力は800馬力とされている。
アラン・プロストがデモラン披露
1994年パリ・モーターショー、前年華々しくF1チャンピオンとなったルノーのブースで遂にエスパスF1が初めてお披露目された。たぶん来場者全員が(^^:)←こういう顔になったと思う。
これまでスペシャリティーカーあるいはショーカーとしてスーパーカーやスポーツカーが作られることは幾度もあったが、さすがにミニバンにF1エンジンを積もうなんてヤツはいなかったことだろう。
「今年のルノーはスゲェの用意してるらしいぜ!」
それで見に行ったらミニバンの後部座席にF1エンジン載っかてんだから笑うしかない。ルノー×マトラ協業10周年とV10エンジンがかかっている・・・なんてジョークも飛び出していたようだが、そんなジョークアリなのか?
そんなエスパスF1だが、パリでの初登場のあとヨーロッパを中心に各地でお披露目。93年のF1王者アラン・プロストがデモランを行ったという記録も残っているらしい。さらに92年のチャンピオンマシンFW14Bとのタンデム走行ショーも行ったとか。
とにかく遊び心が大暴走してしまったエスパスF1。実は現在もきちんと保管されており、フランス・パリから200km南下したロワール地方にあるマトラ博物館にて保管されている。※2023年5月確認
エスパス、アヴァンタイムといった名作乗用車や70年代を彩ったルマン優勝マシン、さらにマトラが製作したF1マシンが整然と並べられる中、エスパスF1もカラーリングそのままに鎮座している。
この先のご時世、いくらコンセプトカーいえどもこんな面白すぎるヤツが誕生することなんてあるのだろうか・・・。
ルノー・エスパスF1が登場するゲームは?
これだけエスパスF1のことを知ってしまったならば、もはや実際に乗りたい!走らせたい!と思うのが人の性というもの。
しかし調べてみた限り、グランツーリスモ2以外に収録された記録がない。これだけ印象深いクルマなのに後継作品には受け継がれなかったのが残念。
もし「珍車限定!レースゲーム」なんてのが発売されたら収録されるんろうかねぇ・・・。今も有志によって現代版リバイバルが作られるくらいだから、きっと人気出ると思うんだが。