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羽根はもういらない!ウィングレスハイパーカー『プジョー・9X8』【珍車紹介vol.3】

2022-05-30

あなたは「レーシングカー」と聞いてどんな姿を想像するだろう?

 

モコっと張り出したフェンダー、
ゴッツいエアロ、
トゲトゲしいカナード、
ボンネットのダクト、
張り巡らされたロールケージ、
ボディに散らばる企業のステッカーたち・・・

たいていの人はこのように考えるだろう。

 

市販車とはかけ離れた姿を持ちながら
エアロダイナミクスとレーシングアビリティを追求し
究極にムダをそぎ落とした美しいデザインは
やはりレース好き・クルマ好きの心をくすぐるだろう。

その中でも
特にレーシングカーの象徴ともいうべきパーツが
「ウィング」である。

 

トランクの上にウィングがあるだけで
「あれ?このクルマ速そうじゃね?」
と素人目にも見て思うもの。

スポーツカーならこれがないと始まらないし、
やはりウィングは「走るクルマ」の
象徴的パーツといえるだろう。

 

F1やツーリングカーはじめ、
サーキット専用のレーシングカーには
ウィングが必ずついている。

ウィングナシなどありえない。

ありえないハズなのだが・・・。

 

 

リアウィングレスのレーシングカー、プジョー・9X8

2021年7月、プジョーから翌年(2022年)からルマン24時間はじめとする世界耐久レースシリーズ(WEC)に参戦することが発表された。プジョーがこのシリーズに復帰するのは2011年以来ということで、多くの注目が寄せられていた。

プジョーは過去にもWECシリーズに参戦しており、90年代には日本で大人気カテゴリーだったグループCカーのプジョー・905を用い参戦。改良型モデルである905エボリューション2は「史上最も醜いCカー」と呼ばれたりしたが、ラストランとなった1993年のルマン24時間で1-2-3フィニッシュで有終の美を飾る。その後も2011年まで参戦を続けた。

しかしこの年を最後にプジョー本社でWECシリーズへの参戦打ち切りが発表され、第一線からは退いていた。そのレース界の雄が2022年に見事カムバックするというのだから期待せずにはいられない。

前衛的・・・いや革新的?まったく新しいコンセプトのルマン・ハイパーカー、プジョー・9X8がアナウンスされた。

しかし・・・、我々は衝撃的なモノを目にする。

プジョーが復帰参戦に使用するマシンには・・・なんと、ウィングがなかったのだ。

 

 

画期的?なリアウィングなしのデザイン

プジョーが参戦するカテゴリーはWECの中でも最もクラスの高い「LMHクラス」である。レーシングカーの中でも最高峰の性能と開発コストがかかるクラスで、2022年現在はトヨタ、グリッケンハウス、アルピーヌしか参戦していない。(アルピーヌはノンハイブリットだが特例で参加)

LMHクラスはガソリン燃料と電気のパワーで構成されるハイブリット機構を備えたパワーユニットを搭載しなければならない。パワーはおよそ1000馬力に達するといわれており、最高時速は約340km。紛れもなくスーパーカーを上回る「ハイパーカー」でなければならない。

プレスの関心を引いたのはリアウィングが無いこと。空力主義の現代レーシングカーにおいて全く前例のないスタイルで注目を集めた。

プジョーは復帰参戦するにあたって新開発レーシングカー、プジョー・9X8を使用することを発表。心臓部には2.6リッターV6エンジンを搭載し、後輪の動力源となる。前輪は電気モーターで動力を補うため、駆動方式は4DWになる。

ビジュアルこそ近年のルマンカーによく見られる近未来型プロトタイプスポーツカーといったところだが、ひときわ観衆の目を引いたのは「リアウィングがないこと」だった。

プジョー・9X8にはリアウィングがない。レーシングカーのマストアイテムであるGTウィングがまったく存在しないのだ。空力が重要視される現代のモータースポーツでこのような仕様は世界のどこを見渡しても見当たらない。それこそ1960年代とか、空力があまり理解されていなかった時代まで遡らないとリアウィングレスのレーシングカーなんて思い浮かばない。

まもなく実践投入されるとのことだが、先日ポルトガルで行われたテストでもリアウィングは装着しておらず、ステージによって仕様を変えるとか、そういうわけではなさそう。リアウィングレスが標準装備というこの異端児は、マニアックカー好きとしては目を見張らずにはいられない。

 

 

リアウィングなんてなくても大丈夫?

じゃあリアウィングなくてもちゃん走れるの?

まぁ私も含めて誰しもそう思う。しかしプレスに公開された車体の写真を見るに、それを補えるレベルのエアロダイナミクスは備えているように思える。

特にリアセクションの形状はかなり特徴的だ。ルーフ中央から伸びるフィンと両端にもフィンが装着されている。またテールランプが片側3枚のクリアパーツが垂直に立てられたカタチとなっている。リアウィングが無い分、他車とは一線を画すメカニズムになっているのがよくわかる。

クリア板を3枚ずつ着けた特徴的なテールライト。これも空力を考えてのデザインなのだろうか。

なんというか・・・レーシングカーというよりバットマンの「バットモービル」という感じで、SF映画に出てきそうなルックスだ。

もちろんプジョーのコメントにも出ている通り、これは前衛的でチャレンジングなことではあるが、まったくの無謀でもない。開発チームが考えに考え抜いてたどり着いた一種の仮説なのだ。過去にも日産がFF駆動のルマンカーGT-R LM NISMOで参戦していたように、テクノロジーは我々の想像の及ばないところまで進化している。

日産の黒歴史?伝説のFF駆動ルマンカー 日産・GT-R LM NISMOを解説!【珍車紹介vol.1】

そうはいってもリアウィングはあったほうがいいのでは?と普通なら思う。ただそうとも言い切れないデータが実はあったりする。

フォーミュラーカーは特に顕著だが、レーシングカーの肝であるダウンフォースの大部分は車体の下部フロアにて発生する。また、リアウィングの役割は車体後方の空気の流れを整え、リアタイヤに十分なトラクションを与えることが目的だ。

現在F1にはDRSというシステムが採用されている。これは直線区間の長いエリアでリアウィングの角度が変わることでトップスピードが伸びることを期待して採用されたものだ。ウィングは通常走行状態ならエアロダイナミクスに大きく貢献するが、一定の速度を超えてしまうと負荷が大きくなりすぎて、逆にスピードの妨げになるという事例が確認されている。

プジョー・9X8のようにリアウィングレスならば、トップスピードの伸び悩み問題も解決できるかもしれない。もちろん通常走行状態でのトラクションのかけかたが最大のポイントになるのだが。

従来のレーシングカーとは異なるアプローチで開発されたため、空力特性も大きく異なるはず。果たして吉と出るか凶と出るか。

空力研究の進化は日夜凄まじいものがあるが、同時に問題になっているのがダーティエアーだ。ダーティエアーとは車体後方で発生する乱気流のことで、後続車がこれを浴びると著しくダウンフォースを損なってしまう。つまり追い抜こうと接近すればするほど乱気流のあおりを食らい、先行車を追い抜こうにも追い抜けなくなる。

近年のモータースポーツで追い抜きが減少している最大の原因といわれており、各界隈で大きな議論の的になっている。2022年からF1では車両規定が一新され、ダーティエアーが発生しにくい車両規定に変更されたほどだ。

リアウィングレスがダーティーエアーにどういった効果を与えるのかは疑問だが、当然リアウィングがないのだから他のレーシングカーとはダウンフォースの受け方も違うはず。他車が苦労する場面で優位に立てれば、当然それは大きなアドバンテージになるのは間違いない。

近年のレース業界でよく聞かれるダーティエアー。空力特化の現代マシンゆえに後続車は小さな乱気流でも大きな影響を受けてしまう。

ウィングがないことで他のレーシングカーたちが頭を悩ませるダーティエアーを解消できるかもしれないし、空力特性が大きく異なることで、他車とは全く比べ物にならないパフォーマンスを披露できるかもしれない。

それが単なる一長一短な仕上がりなのか、あるいはレーシングカーの新たなトレンドとなるのか。それはプジョー・9X8がサーキットを駆け巡ればいずれ結果は見えてくるだろう。

 

 

超豪華ドライバーがそろい踏み

F1ドライバー、DTM王者、SUPER GT覇者が集結

そしてなんといってもプジョー・9X8をドライブするドライバーたちにも注目が集まる。招集されたメンバーはいずれも豪華な顔ぶれだ。

まずはエース格として期待されているロイック・デュバル。SUPER GTを見ている人なら聞きなじみのある名前だろう。2009年にはフォーミュラニッポンを制覇し、翌2010年にはSUPER GT GT500クラスでウイダーHSV-010を駆りシリーズチャンピオンに輝いた名ドライバーだ。かつてホンダのエースとして鳴らしたその剛腕に期待がかかる。

ホンダのエースとして小暮卓史と共にチームを牽引。ウイダーHSV-010で見せた驚異の速さは今なお印象深い。

また同じくSUPER GTで活躍していたジェームス・ロシターも召集された。2013年から7年にわたりGT500クラスで躍動。2013年・2014年にはシリーズ3位の座に輝くなど、数々の功績をあげた。

さらに2010年のDTMチャンピオンにしてF1ドライバーまで上り詰めたポール・ディ・レスタ、2度のフォーミュラE王者ジャン・エリック・ベルニュ、耐久レース経験豊富な若手ホープのミケル・イェンセン、グスタボ・メネゼスと、世界を転戦して戦う一流ドライバーがそろい踏みだ。

またF1へレギュラードライバーとしてカムバックするため離脱したが、ケビン・マグヌッセンもチームに招かれていた。

 

日本にゆかりのある懐かしい名前から元F1ドライバーまで文句なしの一線級がそろったプジョーチーム。マシンに注目が集まるところだが、それを操りサーキットを沸かせるドライバーたちにも注目したいところ。

 

 

2022年WEC第4戦モンツァから参戦開始

5月20日、ついにプジョースポールからWEC参戦についての公式アナウンスが行われた。

きたる7月10日のWEC第4戦モンツァにてデビューすることが決定。ホモロゲーション獲得に専念するため今年のルマン24時間はパスすることも伝えられた。伝統のルマンでその姿を見られないのは残念だが、体制をしっかりしてから参戦するというのにはチームの本気具合を感じる。

なおプジョー・9X8は2台体制でエントリー予定で、ドライバーの割り振りはまだ未定。

ウィングレスマシンついにサーキットへ。レース業界の異端児はどのような走りを見せてくれるのか。

まだ誰も見たことのない新たなカタチのハイパーカー、プジョー・9X8。

願わくば大活躍をしてウィングレスがスタンダードと呼ばれるまでになってほしいもの。間違っても「実在したヘンテコレーシングカー10選!!」みたいな記事では紹介させないでほしい。(もしそうなっても快く取り上げるけども)

時代の異端児がどんな走りを見せてくれるのか。その活躍が今から待ちきれない。

 

 

P.S モンツァを終えて

WEC第4戦モンツァは定刻通り行われ、結果はノンハイブリットのアルピーヌがトヨタを破り優勝という結末を迎えた。

プジョー・9X8も公言通りモンツァから参戦開始。やはりひときわ目を引くウィングレスハイパーカーということで、世界各国で話題になっていたようだ。

記念すべき初陣のリザルトは33位とリタイア。終始トラブルに泣かされ、満足のいく結果を出すことはできなかった。とはいえ参戦したてのレースカーにとってトラブルは当然の試練。最初からうまくいくレーシングカーなどそうそうない。大事なのはここからどうやって改善してくかだ。

 

今回のプジョー・9X8のデビュー戦を見て、まだまだ粗削りながら可能性を感じた。特別遅いとは思わなかったし、ウィングが無いことが何かデメリットを及ぼしているようにも見えなかった。トラブル多発で実力を見る前に終わってしまったところだが、トラブルを改善できれば良い結果を期待できるかもしれない。

まだまだ発展途上なのは間違いないので、今後プジョーが異色のクルマでどんな結果を残すのか注目したいところ。次戦は富士スピードウェイだ。

 

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