クルマ

プリウスにカローラ!?SUPER GTに参戦していた異色のマシンたち【シャコタン好きのレア車図鑑 vol.4】

2022-06-24

 

この記事はシャコタン好きかつマニアックカー好きの管理人が最近気になったクルマを紹介するページです。市販車からレーシングカーまで「コイツ只者じゃねぇぞ・・・」ってクルマをピックアップしていきます!

 

 

SUPER GTはスポーツカーだけじゃない!

サーキットに似合うのはもちろんスポーツカーやスーパーカーだ。

走るのに特化したマシンたちはやはりアクセル全開で走らせてナンボ。公道じゃ出せない轟音をまき散らして激走するスポーツカーはいつ見たって素晴らしい。国内最高峰の人気を誇るSUPER GTに参戦する車両もほとんどがスポーツカー・スーパーカーだ。

 

しかしながらごく少数ではあるが、SUPER GTには4ドアセダンやエコカーといった「大衆車」をベースにGTカーを作り上げてしまう猛者もいる。あるいはそもそも市販すらしていないオリジナルカーを作って参戦する猛者もいる。

世界で見ても独自で画期的なレースレギュレーションを作り上げているSUPER GT。だからこそ時々現れる『珍車』たちは、我々エスニックカー好きの心をワクワク躍らせてくれる。毎年「来年はどんなクルマが来るのか」と楽しみで仕方ないのがSUPER GTのいいところ。

そんなSUPER GTに参戦していた(または今も参戦している)、「え?これがレーシングカーなの!?」と言ってしまいたくなるような魅力的な『珍車たち』を見ていこう。

 

 

 

ホンダ HSV-010

サーキットを震撼させたF1サウンドマシン

GT500クラスはトヨタ・日産・ホンダがメーカーの威信をかけて戦う国内レース最高峰のグランプリだ。GT500クラスにはその時折の最新鋭スポーツカーをベースに仕上げられた最高級のレーシングカーが連ねるが、中でもひときわ印象に残るのだホンダのHSV-010だろう。なぜならHSV-010は歴代参戦車で唯一市販化がされていないからだ。

HSV-010はもともとNSXの後継として市販化が計画されていたが、リーマンショックを受けて白紙に。代わりに2010年からSUPER GTへの参戦車両として使用されることが決まった。するといきなり18号車が第2戦岡山でポールトゥウィン&ファステストラップで初優勝。その後も着実にポイントを重ね、小暮&デュバル組の18号車はシリーズ王者に輝いた。

HSV-010の最大の特徴はエンジン音。フォーミュラニッポン用V8エンジンから伸びる排気管は8→4→2→1の集合管レイアウトを採用しており、まるでF1マシンのような甲高いエンジンサウンドを響かせていた。同時期参戦していたどのマシンとも異なる唯一無二の「F1サウンド」は目をつむってても分かるほど特徴的で刺激的。これぞホンダスピリットと言わしめる最高のエンジンサウンドなのだ。

ちなみにこのエンジンサウンドについてはホンダが意図して作ったことを公言しており、やはりF1屋の血がうずいたというところか。またコーナリング性能についてもかなり研究されており、アンダーステア・オーバーステアが緩やかで運転しやすいマシンだったという。

HSV-010は2013年をもって参戦終了、現在の新型NSXへと受け継がれた。しかしながら市販車未発売だったにもかかわらず、その衝撃的なスピードとF1譲りの超高音サウンドで多くのファンを魅了したことは言うまでもない。今の統一レギュレーションではまずありないマシンなので、古き良き思い出としてホンダの歴史に残っていくことになるだろう。

 

 

ムーンクラフト 紫電

天才デザイナーが描く究極のレーシングカー

SUPER GTでの解説でおなじみ、レーシングカーデザイナー由良拓也が率いるムーンクラフトが製作したマシン。由良は駆け出しの頃から「空力が見える男」と称されるほどレーシングカー界隈で名をはせてきたが、そんな由良を一躍有名にしたのが1977年の富士グランチャンピオンシリーズに参戦していた「紫電・77」である。そんな紫電・77を現代版にリバイバルしたのがムーンクラフト・紫電なのだ。

紫電は2006年~2012年までSUPER GT GT300クラスに参戦。2006年の第8戦オートポリスで初優勝を飾ると、初年度ながらシリーズ2位に輝く大健闘を見せる。翌2007年は優勝回数の差で敗れはしたが、1位と同ポイントで再びシリーズ2位に輝いた。

ベース車にはデイトナ参戦用プロトタイプスポーツカーのライリーMk.XIが使用され、エンジンはクラウンやセルシオに搭載されていた1UZ-FEを搭載。さらにベース車をオリジナル設計で改良を施しており、生まれながらに生粋のレーシングカーだったというわけだ。

市販車をレーシングカーにカスタムして参戦するのが大半なGT300クラスにおいてムーンクラフト・紫電のインパクトは絶大で、80年代に大流行したグループCカーのようなフォルムは多くのファンの目を釘付けにした。空力性能は見た目通りに素晴らしく、市販車ベースには無い個性で多くの人を魅了した。異端の存在ながら間違いなく語り継ぐべきGT300の名車である。

 

 

モスラー MT900

ドロドロサウンドが特徴のアメリカンスーパーカー

モスラー・オートモーティブはウォーレン・モスラーによって設立されたアメリカの自動車会社。モスラーは24時間レースに参戦できるようなハイスペックなスーパーカーを作ることを目的にし、軽量でハイパワーなクルマを世に送り出していた。なお購入者第一号は映画監督の超大物ジョージ・ルーカスだったと言われている。

そんなモスラーが2001年に販売開始したのがモスラー・MT900。カーボンファイバー製のシャシーにコルベットなどに用いられるLSエンジンをミッドシップにマウント。デイトナ24時間をはじめとした世界中のレースで勝ち星を挙げた。SUPER GTには2001年~2007年・2010年~2011年に参戦。デビュー戦でいきなり10位になると、2003年第2戦富士ではポールポジションを取るなど、なかなかの成績を残していたが、年数が進むにつれ戦闘力は影を潜め、2010年に復帰してからもイマイチだった。

GT300クラスはフェラーリやランボルギーニ、ポルシェなど世界のスーパーカーが参戦していることで知られているが、モスラーはそれらに見劣りしない性能とルックスでアピールしていた。サリーン・S7と並びアメリカンスーパーカーの代表作といったところ。名機LSエンジンから発せられるドロドロしたV8サウンドはまさしくアメリカンそのものだ。

ちなみに今日のSUPER GTですっかりおなじみマッハGoGoGoコラボ車「マッハ号」の第一号車はモスラーだったりする。

 

 

ヴィーマック RD320R・RD350R・RD408R

ライトウェイトスポーツの真骨頂

SUBARUと長年タッグを組み、昨年2021年シーズンついにスバル車にシリーズチャンピオンの栄冠をもたらしたことでも知られるR&Dスポーツ。すっかりスバルのチームとしておなじみだが、以前はヴィーマックというクルマで参戦していた。ヴィーマックは東京R&Dとイギリスのヴィーマック・カー・カンパニーで設計・開発されたライトウェイトスポーツカー。SUPER GT参戦車両はモーラがメンテナンスしていた。

2002年にヴィーマック・RD320RがGT300クラスに参戦すると、なんといきなりデビューウィンを飾る。勢いそのままにさらに2勝を挙げシリーズ2位の大活躍を見せた。翌年GT500クラスに挑戦するが奮わなかったものの、その後GT300クラスに戻ると他チームもポテンシャルの高さを買ってヴィーマックを使用するように。

ヴィーマックの特徴は何といってもコーナリング性能で、ウェイトハンデで車重が重くなってもコンスタントに上位争いができるほどのポテンシャルがあった。ストレートで遅れを取ってもコーナリングで挽回できる。まさにライトウェイトスポーツカーかくあるべしというマシンの性能だった。

なおこちらはきちんと市販化されており、ごく少数ではあるが日本にも数台輸入されている。1000kgを切る車重と縦置きホンダエンジンから生み出されるパワーは、ライトウェイトスポーツカーの真骨頂というべき存在だった。

 

 

ASL ガライヤ

オートバックス製「幻のスポーツカー」

ガライヤとはカー用品店でおなじみのオートバックス(オートバックス・スポーツカー・ラボラトリー)が開発した小型スポーツカー。日産製の部品を流用して制作されシルビアに搭載されているSRエンジンをミッドシップに搭載。わずか車重800kgという軽量スポーツカーが誕生した。ガライヤは当初市販車として開発されたが、開発の難航から市販化は見送られた。そのため幻のスポーツカーと称される。

市販化が見送られたガライヤだったが、サーキットでは大活躍。2003年からGT300クラスに参戦すると初年度は奮わなかったものの、翌年以降はフェアレディZなどに載せられるVQ35エンジンに換装したことをきっかけに戦闘力が大幅に向上。毎年のようにシリーズ上位争いを演じ、2004年・2008年・2010年にはシリーズ2位の好成績を収めている。

ヴィーマック同様、ライトウェイトスポーツカーというベース車の特性からコーナリングには定評があった。さらにVQ35エンジンとのマッチングがバッチリ決まり、軽量スポーツカーの泣き所であるストレートスピードを改善できたのが功を奏した。コーナリングが速く、ストレートも早いという理想のレースカーを高いレベルで実現できたのがガライヤだったのだ。

レギュレーションの変更に伴い2012年をもって参戦を終了。優勝7回含む表彰台25回と3度のシリーズ2位という成績を残してサーキットを後にした。長年SUPER GTに参戦していたことからファンからの支持も厚く、記録にも記憶にも残るマシンだった。また今日も参戦を続ける高木真一&新田守男のベテランコンビでもおなじみだった。

 

 

トヨタ プリウス

エコカーはサーキットでも強い!プリウスはレース向き?

プリウスといえばエコカー?・・・のハズだけどSUPER GTではすっかりおなじみのレーシングカー。プリウスは2012年から現在までモデルチェンジをしながら参戦し続けている。街中で毎日のように見かけるプリウスからは想像もつかないが、レーシングカー仕様のプリウスはランボルギーニやフェラーリと肩を並べるほど高い戦闘力を持っているのだ。

トヨタ系セミワークスとして知られるapr(エーピーアール)は2012年よりプリウスをベースにレーシングカーを作成。スーパーフォーミュラ用のV8エンジンをリアミッドシップに、さらにSUPER GT史上初となるハイブリットシステムも搭載。このハイブリットシステムは市販車と全く同じもので助手席にバッテリーなどのメカニズム一式を装備していた。(2019年よりFR化)

この甲斐あって他車とは一線を画すレベルの低燃費を実現。参戦2年目には初優勝を飾り、2015年にはシリーズ3位、2016年にはシリーズ2位に輝いた。市販車同様発進はバッテリーで動くため、ピットアウトのエンジン音はかなり独特。「フィーン・・・ボボボボ!!」という具合にいきなりV8エンジンに切り替わるのが特徴だった。

メカニズムもさることながらプリウスがレーシングカーとして優れている点は空力にある。もともと市販車のプリウスの形状は空力的に優れており、低燃費が実現できる要因のひとつでもある。空力はレーシングカーにおける必須項目なのでこれを予め担保できている点が大きい。加えて燃費がいいことからピットイン時間が少なく済むため、レースを有利に進めることができるのも大きな強みだ。

SUPER GTのプリウスは海外でも人気が高く、Mega Prius(メガプリウス)として親しまれているとか。

 

 

トヨタ カローラアクシオ

あの大衆車がレーシングカーに大変身で大活躍

前述した「メガ・プリウス」を作成したaprはそれ以前にもトンデモなマシンを作り上げていた。それがなんとカローラ・アクシオをベースにしたGTカーだ。アクシオといえばトヨタのコンパクトセダン。THE・大衆車、あるいはTHE・教習車ともいうべきクルマで通用するのかいささか疑問だが、これが驚くほど速かったのだ。

アクシオをベースに選んだのには国産スポーツカーの減少の問題があった。アクシオを使用する以前はMR-Sで長年参戦していたが、新車生産終了を受けてベースが新しいアクシオにスイッチしたと思われる。またaprの金曽代表はアクシオを普段車として使用している内にポテンシャルの高さを感じたらしく、レーシングカーへの素質があると確信したのがアクシオGTカー誕生のきっかけだという。

aprの手によって作られたアクシオはアルファードやロータス・エヴォーラなどに載せられる2GRエンジンをミッドシップにレイアウト。さらに空力効果を最大限にするために大幅なエアロパーツの追加を敢行。結果としてペッチャンコで超ワイドトレットなアクシオが誕生した。

アクシオは2009年~2011年まで使用され、2010年にはシリーズ4位に食い込む大健闘。また2010年途中からエヴァンゲリオンカラーで参戦したことでも話題になった。

 

 

スバル レガシー B4

鈴鹿で輝き見せた名門タッグの意欲作

R&Dスポーツは長年自社開発のヴィーマックで参戦し続けてきたが、本社東京R&Dからの独立をきっかけに新たな車両にスイッチした。そのベースに選ばれたのがスバル・レガシーB4である。レガシーといえばセダン・ワゴンながらハイパワー車として知られる大衆車。しかもGTカーでは極めてレアなスバル車として大きな注目を集めた。

2009年第6戦鈴鹿から参戦。ベース同様に4DWのまま出場していたが、4DWのセッティングは難しかったようで目立った成績を残すことはできなかった。翌年2010年からFRに変更したのが功を奏して、第6戦デビューの舞台となった鈴鹿で初優勝。さらに翌年2011年には第5戦鈴鹿、第7戦オートポリスで優勝を飾った。まさに鈴鹿マイスターといったところ。

この後2012年以降はスバル・BRZにスイッチ。R&Dスポーツの活躍が目に留まり、なんと車両制作はスバルのワークスチームであるSTiが担当することになった。ここからR&Dスポーツとスバルのタッグは公式なものになり、2021年には悲願のシリーズチャンピオンを獲得するに至った。そのきっかけとしてレガシーB4での奮闘があったのは言うまでもないことだろう。

 

 

トヨタ マークX

こだわりのマークXをサーキットへ

埼玉トヨペットは2017年からSUPER GTに参戦しており、2020年には発売されたてのGRスープラを用いてシリーズ2位に輝いた実績を持つ。そんな埼玉トヨペットが参戦当初に使用していたのがマークXだ。ただしこれはマザーシャシー使用車であり、GTアソシエーションが独自開発したマザーシャシーにマークXのガワをのっけたマシンである。

マザーシャシーは国産車ベースGTカーの減少を防ぐためにSUPER GT運営組織であるGTアソシエーションが開発したシャシーで、マークXのほかに86とエヴォーラのバージョンも存在した。コーナリングに優れていることとタイヤ無交換にも耐えうる軽さが強みだった。とはいえマザーシャシーはセッティングがかなり難しく、ガワに充てるクルマを何にするかで大きく変わってくるのだという。

マークXで参戦した経緯としてはトヨペット店の専売車両であるマークXへ強いこだわりを持っていたことと、以前からマークXで耐久レースシリーズに参戦していたことが挙げられる。SUPER GTでは非常に珍しい4ドアベース車であり、レーシングカーのイメージが全くないマークXでの参戦ということで話題になった。

マークXでは大きな成績を挙げることはできなかったが、2020年から他チームに先駆けて導入したGRスープラで大成功をおさめ、今やサーキットに輝く美しいエメラルドグリーンはSUPER GTの新たな顔となりつつある。これからも埼玉トヨペットの活躍から目が離せない。

 

 

 

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